字余りを使うと上級者っぽく見えますよね。
初句が字余りの俳句をあつめました。
初句が字余りの俳句
聖夜眠れり頸(くび)やはらかき幼な子は/森澄雄
裸でうたふ子の列大人はいくさなすな/中村草田男
谷は夕焼子は湯あがりの髪ぬれて/長谷川素逝
鳳仙花は小さき娘が植ゑにけり/河東碧梧桐
さらば少年薄氷高く日へ投じ/恩田侑布子
子等に試験なき菊月のわれ愉し/能村登四郎
少年走る秋晴れの日の古き写真/津沢マサ子
少女膝をこぼして木の実拾いけり/楠本憲吉
寒夜明るし分かれて少女駆け出だす/西東三鬼
少年美し雪夜の火事に昂りて/中村苑子
少年ありピカソの青の中に病む/三橋敏雄
人それぞれ書を読んでゐる良夜かな/山口青邨
西瓜切るや家に水気と色あふれ/西東三鬼
何か愉し年終るよの熱き湯に/日野草城
玉の如き小春日和を授かりし/松本たかし
明日も生きん白き炎の髪洗ひ/木田千女
この樹登らば鬼女となるべし夕紅葉/三橋鷹女
冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯/秋元不死男
生きることは一と筋がよし寒椿/五所平之助
年改まり人改まり行くのみぞ/高浜虚子
思ひつきて独活大木となって見よ/寺田寅彦
四月一日逢う約束をした二人/鳴戸奈菜
万有引力あり馬鈴薯にくぼみあり/奥坂まや
あら何共なやきのふは過て河豚汁/芭蕉
闘争本部からはつらつと夏の少女たち/栗林一石路
女教師の矜持に疲れ夏あざみ/鍵和田秞子
砧打て我に聞かせよや坊が妻/芭蕉
暴落西瓜百姓くわつと割つて食う/栗林一石路
夜業人に調帯たわたわたわたわす/阿波野青畝
教師は負ひ生徒は対ふ秋の風/中村草田男
長靴に腰埋め野分の老教師/能村登四郎
銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく/金子兜太
椿落つる我が死ぬ家の暗さかな/前田普羅
女ざかりといふ語かなしや油照り/桂信子
浴衣のまま行方知れずとなるもよし/鈴木真砂女
ふたり四人そしてひとりの葱刻む/西村和子
年酒酌み生国遠き漢たち/中村苑子
金魚他向けん肉屋の鉤に彼奴を吊り/中村草田男
何をもつて悪女と言ふや火取虫/鈴木真砂女
戦死すべて犬死なりき草茂る/長谷川櫂
除夜の畳拭くやいのちのしみばかり/渡辺水巴
雪の上にうつぶす敵屍銅貨散り/長谷川素逝
色の恋の死ぬのいきるの杜若/竹久夢二
氷菓互ひに中年の恋ほろにがき/秋元不死男
月に来よと只さりげなく書き送る/正岡子規
呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉/長谷川かな女
窓に銀河妻ならぬ人おもひ寝る/上村占魚
思ふ人の側へ割込む炬燵哉/一茶
告げざる愛雪嶺はまた雪かさね/上田五千石
玉菜は巨花と開きて妻は二十八/中村草田男
空は太初の青さ妻より林檎うく/中村草田男
前途永き妻に加護あれ降誕祭/中村草田男
やさしく抱かれ接吻する者の家に帰らん/萩原朔太郎
老妓ひとり春夜の舞の足袋白し/渡辺水巴
湖畔亭にヘヤピンこぼれ雷匂ふ/西東三鬼
疾風怒濤の晩年もよし冬欅/倉橋羊村
船のやうに年逝く人をこぼしつつ/矢島渚男
面白くて傘をさすならげんげん野/長谷川かな女
満齢古稀さくらのもとにけふ一日/大野林火
敬老日の腰紐しかと結びけり/鈴木真砂女
八十路半ば胸の奥まで初明かり/水原秋桜子
セーノヨイショ春のシーツの上にかな/川崎展宏
七夕竹惜命の文字隠れなし/石田波郷
生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉/夏目漱石
いくたび病みいくたび癒えき実千両/石田波郷
雪はしづかにゆたかにはやし屍室/石田波郷
勿忘草わかものの墓標ばかりなり/石田波郷
岩に落葉表裏生死のごとくあり/福田蓼汀
父のごとき夏雲立てり津山なり/西東三鬼
めぐりあひやその虹七色七夜まで/中村草田男
塚も動け我泣声は秋の風/芭蕉
亡き友肩に手をのするごと秋日ぬくし/中村草田男
金剛茅舎朴散れば今も可哀さう/中村草田男
すでにすでに冬日を鼻におん屍/石塚友二
うどん供へて、母よ、わたくしもいただきまする/種田山頭火
旅に病で夢は枯野をかけ廻る/芭蕉
書てみたりけしたり果はけしの花/北枝
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな/正岡子規
病めば布団のそと冬海の青きを覚え/中塚一碧楼
山に金太郎野に金太郎予は昼寝/三橋敏雄
夏の少女が生態系を乱すなり/大牧広
青大将に生れ即刻殺されたし/宮入聖
烏賊に触るる指先や春行くこころ/中塚一碧楼
石の上に秋の鬼ゐて火を焚けり/富澤赤黄男
打てばひびくわれと思ふや秋の風/久保より江
くすぐつたいぞ円空仏に子猫の手/加藤楸邨
酒も少しは飲む父なるぞ秋の夜は/大串章
恙なしや今日立春の鳥獣/北原志満子
妻は開きおのれは丸のどぜう鍋/吉村昭
人の妻の琴の指南や沈丁花/中村楽天
壜に入れて麦湯冷やすや水の中/星野麦人
冬木の枝しだいに細し終に無し/正木浩一
阿修羅の鵜女体とききしあはれさよ/渡辺桂子
おかしいから笑ふよ風の歩兵たち/鈴木六林男
会社やめたしやめたしやめたし落花飛花/松本てふこ
呵々大笑入歯はづして年忘/五百木瓢亭
洗面器の底に西瓜の種一つ/篠崎央子
蜥蜴の交尾ずるずると雄ひきずられ/田川飛旅子
夏痩始まる夜は「お母さん」売切です/加藤知世子
握りつぶすならその蝉殻を下さい/大木あまり
花こぼるる棕櫚の下掃くさびしさよ/村山たか女
春は曙そろそろ帰つてくれないか/櫂未知子