「かな」「けり」「なり」とかで終わると、とても俳句らしく、上級者っぽく見えすね。
「かな」で終わる俳句をあつめてみました。
俳句の「かな」の使い方
俳句で使われる「かな」は、詠嘆をあらわす切れ字と呼ばれることば。「哉」とも書きます。
意味的には「◯◯だなあ」といったところ。
「かな」で終わる俳句
叩かれて昼の蚊を吐く木魚哉/夏目漱石
思ふ人の側へ割込む炬燵哉/一茶
内のチヨマが隣のタマを待つ夜かな/正岡子規
ためらってまた矢のごとき蜻蛉かな/小沢信男
はたらいてもう昼が来て薄暑かな/能村登四郎
胸ぐらに風掻き入るる団扇かな/長谷川櫂
眉の根に泥乾きゐるラガーかな/三村純也
蝶に気のほぐれて杖の軽さかな/井上井月
柳から出てゆく船の軽さかな/井上井月
流れゆく大根の葉の早さかな/高浜虚子
おうた子に髪なぶらるる暑さ哉/園女
咳ひとつ赤子のしたる夜寒かな/芥川龍之介
しみじみと子は肌へつくみぞれ哉/秋色
雪とけて村一ぱいの子ども哉/一茶
五月雨に小鮒をにぎる子供かな/野坡
村の子の草くぐりゆく清水かな/石井露月
どの子にも涼しく風の吹く日かな/飯田龍太
名月をとつてくれろと泣子哉/一茶
正月の子供に成て見たき哉/一茶
わらんべの溺るるばかりの初湯かな/飯田蛇笏
ちる花にはにかみとけぬ娘哉/一茶
卒業の兄と来ている堤かな/芝不器男
母と寝て母を夢むる藪入かな/松瀬青々
真昼の湯子の陰毛の光るかな/西東三鬼
あふむけば口いつぱいにはる日哉/成美
文机に顔押しつけて昼寝哉/正岡子規
浴衣裁つこころ愉しき薄暑かな/高橋淡路女
人それぞれ書を読んでゐる良夜かな/山口青邨
賑やかにふきあげて来る雑煮かな/松瀬青々
激しさのかたまり落つる女瀧かな/鷲谷七菜子
秋鶏が見てゐる陶の卵かな/飯田蛇笏
にせものときまりし壺の夜長かな/木下夕爾
憂きことを海月に語る海鼠かな/召波
動くとも見えで畑打つ男かな/去来
生きはかり死にはかりして打つ田かな/村上鬼城
ふくよかな乳に稲扱く力かな/川端茅舎
隣の課灯の消えてゐるちちろかな/小川軽舟
縫始今暖めて来し手かな/中村汀女
何もせず坐りて仕事始めかな/清水基吉
椿落つる我が死ぬ家の暗さかな/前田普羅
紺絣春月重く出でしかな/飯田龍太
淋しさの底ぬけて降るみぞれかな/丈草
赤貧にたへて髪梳く霜夜かな/飯田蛇笏
走馬灯こころに人を待つ夜かな/高橋淡路女
盆過ぎの粗き雨打つ別れかな/鍵和田秞子
老が恋忘れんとすればしぐれかな/蕪村
冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな/日野草城
牡丹雪その夜の妻のにほふかな/石田波郷
ひめはじめ八重垣つくる深雪かな/増田龍雨
川越えし女の脛に花藻かな/几董
雷に怯えて長き睫かな/日野草城
あきざくら咽喉に穴あく情死かな/宇多喜代子
白々と女沈める柚子湯かな/日野草城
谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな/金子兜太
雨蛙めんどうくさき余生かな/永田耕衣
木枕にしら髪なづむ夜寒かな/星布
鮟鱇もわが身の業も煮ゆるかな/久保田万太郎
古希といふ春風にをる齢かな/富安風生
石橋に秋の冷えある八十路かな/鍵和田秞子
狐火を詠む卒翁でございかな/阿波野青畝
ここに来てわが人生の小春かな/深見けん二
花咲いて死とむないが病かな/来山
春月の病めるが如く黄なるかな/松本たかし
セーノヨイショ春のシーツの上にかな/川崎展宏
病み呆けて泣けば卯の花腐しかな/石橋秀野
短夜の看とり給ふも縁かな/石橋秀野
病雁の夜さむに落て旅ね哉/芭蕉
うづくまる薬の下の寒さ哉/丈草
竹馬の影近づきし障子かな/松本たかし
長病の今年も参る雑煮かな/正岡子規
朴散華即ち知れぬ行方かな/川端茅舎
木つつきの死ねとてたたく柱かな/一茶
生ぜしも死するもひとり柚子湯かな/瀬戸内寂聴
白梅に過ぎゆく七日七日かな/大場白水郎
和事師の春寒顔のまことかな/久保田万太郎
亡き人と見るべく花の莚かな/清水基吉
手のうへにかなしく消る蛍かな/去来
亡き人を偲ぶ新内流しかな/山崎ひさを
此の秋は膝に子のない月見かな/鬼貫
たましひのたとへば秋のほたるかな/飯田蛇笏
天地の間にほろと時雨かな/高浜虚子
月も見て我はこの世をかくし哉/千代女
何処やらに鶴の声きく霞かな/井上井月
糸瓜咲て痰のつまりし仏かな/正岡子規
只頼む湯婆一つの寒さかな/内藤鳴雪
震災忌我に古りゆく月日かな/永田青嵐
これでよし百万年の仮寝かな/大西瀧治郎
あをあをと年越す北のうしほかな/飯田龍太
秋風に吹かれて開く扉かな/篠原温亭
阿修羅迦楼羅緊那羅摩呉羅伽大火かな/尾崎迷堂
薄氷を掃き出してある日向かな/藤松遊子
馬の眼にうつりて赤き椿かな/吉田冬葉
裏山にかげろふを飼ふ女かな/閒村俊一
漕ぎぬけて川下に見る花火かな/松瀬青々
三枚におろされている薄暑かな/橋閒石
しづかなるいちにしなりし障子かな/長谷川素逝
新涼の固くしぼりし布巾かな/久米正雄
水中をさらに落ちゆく木の実かな/鈴木鷹夫
絶壁に眉つけて飲む清水かな/松根東洋城
そなさんと知つての雪の礫かな/沢田はぎ女
岨行けばサルに打たれる木実哉/巌谷小波
祖母山も傾山も夕立かな/山口青邨
蝶の舌ゼンマイに似る暑さかな/芥川龍之介
次の田に畦の影ある冬田かな/倉田紘文
次の間へ湯を飲みに立つ夜長かな/岡本癖三酔
天渺々笑ひたくなりし花野かな/渡邊水巴
友を食むおたまじやくしの腮かな/島村元
投げ出して足遠くある暮春かな/村上鞆彦
鰰に映りてゐたる炎かな/石田勝彦
初明り銀河系字地球かな/有馬朗人
春雨といふ音のしてきたるかな/鷲谷七菜子
春の風顔いっぱいに吹く日かな/成田千空
はればれと佐渡暮れゆく跣足かな/藤本美和子
蜩のなき代わりしははるかかな/中村草田男
見る人もなき夜の森のすくらかな/駒木根淳子
ゆさゆさと大枝ゆるる桜かな/村上鬼城
よろこべばしきりに落つる木の実かな/富安風生
老人が被つて麦稈帽子かな/今井杏太郎
さまざまの事おもひ出す桜哉/芭蕉
もの一我がよはかろきひさご哉/芭蕉