雨が出てくる短歌11選

雨短歌

「雨」が出てくる短歌を、有名な短歌から、あまり知られていないかもしれない短歌までをピックアップしてみました。

ユニークな歌、かっこいい歌、しんみりする歌などなど。
「雨」が思い起こさせるものはさまざまあって、いろいろな表現があって面白いなと思いました。

授業で短歌をやっているところだという中学生や高校生の皆さんにも参考になるのではないかと思います。

それでは、どうぞ。

雨が出てくる短歌11選

気象庁天気予報に従ひて今日も要なき傘持ちありく/奥村晃作

よくありますね、これ笑
天気予報で、降水確率が高かったから傘を持って出たけど全然降らない。
傘だけ持って歩いてる。
他の人は傘持ってないのに自分だけ傘持ってて恥ずかしい、みたいなこともよくあります笑

好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君/枡野浩一

「君」に想いを寄せていたあの頃を思い出すとき、いつも雨が降っているイメージなのでしょう。
それも「好きだった雨」になっているし、素敵な思い出ですね。

ひとつの歌の中で、雨 → 日々 → 君と対照が移動していくのが印象的にさせます。

もの書きてひと日を過ごし雨もまたその文章の中に書き込む/浜田康敬

写実的と言うのでしょうか?
「もの書きて」の「もの」はこの短歌自体だったりするのでしょうか。
雨が降っているから、その日は室内で書き物をして過ごしている。それを書いている瞬間、外では雨が降っていて、その雨をその文章の中に書き込んだ。
その文章というのがこの短歌ですかね?!もしかして。

雨宿りせんとてのれん分ける手がその雨筋の二三本も分く/浜田康敬

ふと起こした、のれんを分ける動作。
その手と雨にという「部分」フィーチャーした歌。
なんでもない瞬間を切り取っているけれど、確かにそうだし、本人はこの瞬間にそれをキャッチしたのがおもしろいと思いました。

地に届くまでを無音に来し雨が真夜したたかに地上をたたく/浜田康敬

雨の音が聞こえてくるようです。
静寂の中に雨の音だけがあるイメージ。
地に届くまでを無音、地上をたたく、と丁寧に表現したことでその音が見事に浮かび上がってきました。

動こうとしないおまえのずぶ濡れの髪ずぶ濡れの肩 いじっぱり!/永田和宏

恋人同士なのでしょうか。
口論の途中に雨が降ってきたのか、雨に濡れながら帰っている最中に口論になったのか。

「ほら!雨に濡れるから!とりあえず行こう」と促しても動こうとしない。
意地っ張りですねえ。よっぽど反抗したい気持ちだったのでしょう。

たった一度のこの世の家族寄りあいて雨の廂に雨を見ており/永田和宏

奇跡を感じます。
「たった一度のこの世の家族」
宇宙には長い歴史があって、その中で今生きていて、たくさんの人間がいる中で自分が自分で、その自分の家族はこの家族しかいない。
その家族が今現在寄り合う瞬間もこの今しかない。
「雨の廂に雨を見ている」という何でもないシーンを描くことで、奇跡がさらに浮かび上がっている気がします。

雨降れば泥踏みなづむ大津道われに馬あり召さね旅人/橘曙覧

橘曙覧さんは、幕末の方らしいです。

雨が降って道がぬかるんでいる。その歩きにくい道を旅の人が歩いている。
自分は馬に乗ってるから、乗って行かれませんか? という優しい歌ですね。

この方の独楽吟という「たのしみは〜」から始まる日常の些細な楽しみを詠った短歌がとても素敵で、岩波文庫の歌集を立ち読みしてパッと目に留まったのがこちらでした。

地下道を上り来りて雨の降る薄明の街に時の感じなし/土屋文明

なんかわかります。
地下道から地上に出てきて、雨が降る薄明の街に、時間というものが感じられない。
「いま何時?」というのではなく、時間という概念のない感じがする、という風にボクはとらえました。

びしょ濡れのレインコートのままに佇(た)ちどの男もどの男も一人/佐佐木幸綱

なんか渋いですよね。ドラマチックなシーンをイメージさせます。
独りの男が何人も雨の中びしょ濡れのレインコートのまま無言で立っている。
あれ?なんか滑稽な映像にも思えてきました。

雨ののちのぼれる月の照れれども紅は暗し夜の鳳仙花/宮柊二

とても綺麗な映像です。
雨が上がって月がきれいに光っている夜。庭に赤い鳳仙花があるけれど、その紅色は暗い。
雨上がりの夜の静かな黒に、黄色く光る月、鈍い紅。
色彩の美しい、花札の一枚でありそうな映像にも思えました。

「雨」出てくる素敵な短歌を詠んだ歌人たちの他の歌

おまけです。
上記で紹介した「雨」が出てくる短歌を詠んだ歌人の他の短歌を紹介します。

この人の短歌好きかも、と思われたらぜひいろいろと他の短歌も見てみてください。

奥村晃作

ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文具店に行く

枡野浩一

こんなにもふざけたきょうがある以上どんなあすでもありうるだろう

浜田康敬

活字拾う仕事にもすでにわが慣れて「恋」という字の置場所も知る

永田和宏

きみに逢う以前のぼくに遭いたくて海へのバスに揺られていたり

橘曙覧

たのしみは すびつのもとに うち倒れ ゆすり起こすも 知らで寝し時

土屋文明

休暇となり帰らずに居る下宿部屋思はぬところに夕影のさす

佐佐木幸綱

のぼり坂のペダル踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ

宮柊二

毎日の勤務の中のをりふしに呆然とをるをわが秘密とす

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