文学賞をダブル受賞している小説まとめ

文学賞をダブル受賞している小説まとめ

おもしろいよとおすすめされて『邂逅の森』という小説を読みました。
めちゃくちゃおもしろかったので調べてみたら、直木賞と山本周五郎をダブル受賞した作品でした。

ひょっとして文学賞をダブルで受賞している作品は間違いなくおもしろいのではないかと思い、調べてみました!

  1. 芥川賞と他の文学賞のダブル受賞作品
    1. 『貝に続く場所にて』石沢麻依
    2. 『蛇にピアス』金原ひとみ
    3. 『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子
    4. 『限りなく透明に近いブルー』村上龍
    5. 『アサッテの人』諏訪哲史
    6. 『祭りの場』林京子
    7. 『三匹の蟹』大庭みな子
    8. 『榧の木祭り』高城修三
    9. 『過越しの祭』米谷ふみ子
    10. 『百年泥』石井遊佳
    11. 『太陽の季節』石原慎太郎
    12. 『夏の流れ』丸山健二
    13. 『オキナワの少年』東峰夫
    14. 『ネコババのいる町で』瀧澤美恵子
    15. 『介護入門』モブ・ノリオ
    16. 『影裏』沼田真佑
  2. 直木賞と他の文学賞のダブル受賞作品
    1. 『テスカトリポカ』佐藤究
    2. 『蜜蜂と遠雷』恩田陸
    3. 『邂逅の森』熊谷達也
    4. 『子育てごっこ』三好京三
    5. 『青春デンデケデケデケ』芦原すなお
  3. 本屋大賞と他の文学賞のダブル受賞作品
    1. 『蜜蜂と遠雷』恩田陸
    2. 『村上海賊の娘』和田竜
    3. 『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎
    4. 『一瞬の風になれ』佐藤多佳子
    5. 『天地明察』冲方丁
    6. 『夜のピクニック』恩田陸
  4. その他ダブル受賞の作品
    1. 『フルハウス』柳美里
    2. 『冥途あり』長野まゆみ
    3. 『魚神』千早茜
    4. 『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟
    5. 『火の山―山猿記』津島佑子
    6. 『雪沼とその周辺』堀江敏幸
    7. 『ジニのパズル』崔実
    8. 『工場』小山田浩子
    9. 『ワイルド・ソウル』垣根涼介
    10. 『Ank: a mirroring ape』佐藤究
    11. 『櫛挽道守』木内昇
    12. 『さようなら、オレンジ』岩城けい
    13. 『ダブル・ファンタジー』村山由佳
    14. 『自転しながら公転する』山本文緒

芥川賞と他の文学賞のダブル受賞作品

『貝に続く場所にて』石沢麻依

165回(2021年上半期)芥川賞第64回(2021年度)群像新人文学賞のダブル受賞。

コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。人と場所の記憶に向かい合い、静謐な祈りを込めて描く鎮魂の物語。

『蛇にピアス』金原ひとみ

第27回(2003年)すばる文学賞130回(2003年下半期)芥川賞のダブル受賞。

蛇のように舌を二つに割るスプリットタンに魅せられたルイは舌ピアスを入れ身体改造にのめり込む。恋人アマとサディスティックな刺青師シバさんとの間で揺れる心はやがて…。

『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子

第54回(2017年度)文藝賞158回(2017年下半期)芥川賞のダブル受賞。

24歳の秋、故郷を飛び出した桃子さん。住み込みのバイト、周造との出会いと結婚、2児を必死に育てた日々、そして夫の突然の死―。70代、いまや独り茶を啜る桃子さんに、突然ふるさとの懐かしい言葉で、内なる声たちがジャズセッションのように湧いてくる。おらはちゃんとに生ぎだべか?悲しみの果て、辿り着いた自由と賑やかな孤独。すべての人の生きる意味を問う感動のベストセラー。

『限りなく透明に近いブルー』村上龍

第19回(1976年度)群像新人文学賞75回(1976年上半期)芥川賞のダブル受賞。

米軍基地の街・福生のハウスには、音楽に彩られながらドラッグとセックスと嬌声が満ちている。そんな退廃の日々の向こうには、空虚さを超えた希望がきらめく――。著者の原点であり、発表以来ベストセラーとして読み継がれてきた、永遠の文学の金字塔。

『アサッテの人』諏訪哲史

第50回(2007年度)群像新人文学賞137回(2007年上半期)芥川賞のダブル受賞。

吃音(きつおん)による疎外感から凡庸な言葉への嫌悪をつのらせ、孤独な風狂の末に行方をくらました若き叔父。彼にとって真に生きるとは「アサッテ」を生きることだった。世の通念から身をかわし続けた叔父の「哲学的奇行」の謎を解き明かすため、「私」は小説の筆を執るが……。

『祭りの場』林京子

第18回(1975年度)群像新人文学賞73回(1975年上半期)芥川賞のダブル受賞。

如何なれば膝ありてわれを接(うけ)しや──。長崎での原爆被爆の切実な体験を、叫ばず歌わず、強く抑制された内奥の祈りとして語り、痛切な衝撃と深甚な感銘をもたらす、林京子の代表的作品。

『三匹の蟹』大庭みな子

第11回(1968年度)群像新人文学賞59回(1968年上半期)芥川賞のダブル受賞。

異国に暮らす由梨は、夫と自分双方の浮気相手が集うホームパーティーに参加する気になれず、ひとりで外出してしまう。
遊園地の民芸館で知り合ったアメリカ男に誘われ、海辺のドライブについて行き、そこで男は、赤いネオンが点滅している宿「三匹の蟹」へ行こうと誘うのだった。

『榧の木祭り』高城修三

第9回(1977年)新潮新人賞78回(1977年下半期)芥川賞のダブル受賞。

『過越しの祭』米谷ふみ子

94回(1985年下半期)芥川賞第17回(1985年)新潮新人賞のダブル受賞。

『百年泥』石井遊佳

第49回(2017年)新潮新人賞158回(2017年下半期)芥川賞のダブル受賞。

私はチェンナイ生活三か月半にして、百年に一度の洪水に遭遇した。橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……。

『太陽の季節』石原慎太郎

第1回(1955年度)文學界新人賞34回(1955年下半期)芥川賞のダブル受賞。

女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……。
退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。

『夏の流れ』丸山健二

第23回(1966年度・下)文學界新人賞56回(1966年下半期)芥川賞のダブル受賞。

平凡な家庭を持つ刑務官の平穏な日常と、死を目前にした死刑囚の非日常を対比させ、死刑執行日に到るまでの担当刑務官と死刑囚の心の動きを、緊迫感のある会話と硬質な文体で簡潔に綴る。

『オキナワの少年』東峰夫

第33回(1971年度・下)文學界新人賞66回(1971年下半期)芥川賞のダブル受賞。

『ネコババのいる町で』瀧澤美恵子

第69回(1989年度・下)文學界新人賞102回(1989年下半期)芥川賞のダブル受賞。

わずか三歳で、ロスアンジェルスから一人で日本に送られた恵里子。実の母に捨てられたショックで一時的な失語症に陥ってしまうが、ある日、隣の「ネコババ」の家で突然言葉を取り戻す。生みの親よりも「本当の家族」となった祖母と叔母に育てられた多感な少女が観た人間模様を描く。

『介護入門』モブ・ノリオ

第98回(2004年度・上)文學界新人賞131回(2004年上半期)芥川賞のダブル受賞。

大麻に耽りながら世間に呪詛を浴びせる「俺」は寝たきりの祖母を懸命に介護する。

『影裏』沼田真佑

第122回(2017年度)文學界新人賞157回(2017年上半期)芥川賞のダブル受賞。

大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。
北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。
ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。
いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。

直木賞と他の文学賞のダブル受賞作品

『テスカトリポカ』佐藤究

165回(2021年上半期)直木賞第34回(2021年)山本周五郎賞のダブル受賞。

選考委員大激論! 今一番ヤバいエンターテインメント!
メキシコで麻薬密売組織の抗争があり、組織を牛耳るカサソラ四兄弟のうち三人は殺された。生き残った三男のバルミロは、追手から逃れて海を渡りインドネシアのジャカルタに潜伏、その地の裏社会で麻薬により身を持ち崩した日本人医師・末永と出会う。バルミロと末永は日本に渡り、川崎でならず者たちを集めて「心臓密売」ビジネスを立ち上げる。一方、麻薬組織から逃れて日本にやってきたメキシコ人の母と日本人の父の間に生まれた少年コシモは公的な教育をほとんど受けないまま育ち、重大事件を起こして少年院へと送られる。やがて、アステカの神々に導かれるように、バルミロとコシモは邂逅する。

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

156回(2016年下半期)直木賞2017年本屋大賞のダブル受賞。

俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

『邂逅の森』熊谷達也

第17回(2004年)山本周五郎賞131回(2004年上半期)直木賞のダブル受賞。

秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。

『子育てごっこ』三好京三

第41回(1975年度・下)文學界新人賞76回(1976年下半期)直木賞のダブル受賞。

東北の寒村で小学校教師をしている夫妻が、ひょんなことから学校に通ったことのない少女・吏華を預かることになった。吏華は5歳のころより老画家に連れられて、住まいを転々としていたのだ。
厳格な<男先生>と社会常識のかけらも身につけていない吏華、その間に立って右往左往する<女先生>の波乱の日々が始まる――。

『青春デンデケデケデケ』芦原すなお

第27回(1990年度)文藝賞105回(1991年上半期)直木賞のダブル受賞。

1965年の春休み、ラジオから流れるベンチャーズのギターがぼくを変えた。“やーっぱりロックでなけらいかん”―。四国の田舎町の高校生たちがくりひろげる抱腹絶倒、元気印の、ロックと友情と恋の物語。青春バンド小説決定版。

本屋大賞と他の文学賞のダブル受賞作品

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

156回(2016年下半期)直木賞2017年本屋大賞のダブル受賞。

俺はまだ、神に愛されているだろうか?
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。
著者渾身、文句なしの最高傑作!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

『村上海賊の娘』和田竜

第35回(2014年)吉川英治文学新人賞2014年本屋大賞のダブル受賞。

和睦が崩れ、信長に攻められる大坂本願寺。毛利は海路からの支援を乞われるが、成否は「海賊王」と呼ばれた村上武吉の帰趨にかかっていた。折しも、娘の景は上乗りで難波へむかう。家の存続を占って寝返りも辞さない緊張の続くなか、度肝を抜く戦いの幕が切って落とされる! 第一次木津川合戦の史実に基づく一大巨篇。

『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎

第21回(2008年)山本周五郎賞2008年本屋大賞のダブル受賞。

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。なぜだ? 何が起こっているんだ? 俺はやっていない――。首相暗殺の濡れ衣をきせられ、巨大な陰謀に包囲された青年・青柳雅春。暴力も辞さぬ追手集団からの、孤独な必死の逃走。行く手に見え隠れする謎の人物達。運命の鍵を握る古い記憶の断片とビートルズのメロディ。スリル炸裂超弩級エンタテインメント巨編。

『一瞬の風になれ』佐藤多佳子

第28回(2007年)吉川英治文学新人賞2007年本屋大賞のダブル受賞。

春野台高校陸上部、1年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。

『天地明察』冲方丁

第31回(2010年)吉川英治文学新人賞2010年本屋大賞のダブル受賞。

江戸、四代将軍家綱の御代。ある「プロジェクト」が立ちあがった。即ち、日本独自の太陰暦を作り上げること–日本文化を変えた大いなる計画を、個の成長物語としてみずみずしくも重厚に描く傑作時代小説!!

『夜のピクニック』恩田陸

第26回(2005年)吉川英治文学新人賞2005年本屋大賞のダブル受賞。

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

その他ダブル受賞の作品

芥川賞、直木賞、本屋大賞以外の、太宰治賞や野間文芸賞、谷崎潤一郎賞、新潮新人賞などの賞をダブル受賞している作品たちです。

『フルハウス』柳美里

第24回(1996年度)泉鏡花文学賞第18回(1996年)野間文芸新人賞のダブル受賞。

「家を建てる」が口癖だった父は、理想の家族を夢みて、本当に家を建ててしまう。しかし、娘たちも、十六年前に家を出た妻もその家には寄りつかなかった。そこで、父はホームレスの一家を家に招き、一緒に暮らし始めるのだが…。

『冥途あり』長野まゆみ

第43回(2015年度)泉鏡花文学賞第68回(2015年)野間文芸賞のダブル受賞。

川辺の下町、東京・三河島。そこに生まれた父の生涯は、ゆるやかな川の流れのようにつつましくおだやかだった―。そう信じていたが、じつは思わぬ蛇行を繰り返していたのだった。亡くなってから意外な横顔に触れた娘は、あらためて父の生き方に思いを馳せるが…。遠ざかる昭和の原風景とともに描き出すある家族の物語。

『魚神』千早茜

第37回(2009年度)泉鏡花文学賞第21回(2008年)小説すばる新人賞のダブル受賞。

遊女屋が軒を連ねる、閉ざされた小さな島。美貌の姉弟は引き裂かれ、姉は女郎、弟は裏華町の男娼を経て、薬売りとして生きている。互いを求める二人の運命が、島の「雷魚伝説」と交錯し…。

『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟

第35回(2003年)新潮新人賞第27回(2005年)野間文芸新人賞のダブル受賞。

「わたし」の部屋には、配りきれなかったチラシが溜まっていく。チラシに書かれた文字が勝手に増殖して…。

『火の山―山猿記』津島佑子

第34回(1998年)谷崎潤一郎賞第51回(1998年)野間文芸賞のダブル受賞。

火の山――とは富士山のこと。その富士山に寄り添いながら生きた有森家の変遷史。誕生と死、愛と結婚の型。戦中戦後を生きた人たちを描きながら、日本の近代を見つめ直した傑作長編小説。

『雪沼とその周辺』堀江敏幸

第40回(2004年)谷崎潤一郎賞第8回(2004年)木山捷平文学賞のダブル受賞。

小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす川端賞・谷崎賞受賞の傑作連作小説。

『ジニのパズル』崔実

第59回(2016年度)群像新人文学賞第33回(2016年)織田作之助賞のダブル受賞。

「日本には、私のような日本生まれの韓国人が通える学校が、二種類あるんだ」――。1998年、テポドンが発射された翌日、チマ・チョゴリ姿で町を歩いていたジニは、警察を名乗る男たちに取り囲まれ……。二つの言語の間で必死に生き抜いた少女が、たった一人で起こした“革命”の物語。

『工場』小山田浩子

第42回(2010年)新潮新人賞第30回(2013年)織田作之助賞のダブル受賞。

大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。

『ワイルド・ソウル』垣根涼介

第25回(2004年)吉川英治文学新人賞第6回(2004年)大藪春彦賞のダブル受賞。

覚醒した怒りが三百発の弾丸と化す! 嵌められた枠組みを打破するために颯爽と走り出した男女の姿を圧倒的なスケールと筆致で描く、史上最強の犯罪小説。

『Ank: a mirroring ape』佐藤究

第39回(2018年)吉川英治文学新人賞第20回(2018年)大藪春彦賞のダブル受賞。

2026年、多数の死者を出した京都暴動(キョート・ライオット)。ウィルス、病原菌、化学物質、テロ攻撃の可能性もない。人類が初めてまみえる災厄はなぜ起こったのか。発端はたった一頭の類人猿、東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった。一人の霊長類研究者が壮大すぎる謎に立ち向かう。

『櫛挽道守』木内昇

第9回(2014年)中央公論文芸賞第27回(2014年)柴田錬三郎賞のダブル受賞。

幕末、木曽山中の小さな宿場町。年頃になれば女は嫁すもの、とされていた時代、父の背を追い、櫛挽職人をひたむきに目指す女性を描く。

『さようなら、オレンジ』岩城けい

第29回(2013年)太宰治賞第8回(2014年)大江健三郎賞のダブル受賞。

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。

『ダブル・ファンタジー』村山由佳

こちらはトリプルです。
第22回(2009年)柴田錬三郎賞第4回(2009年)中央公論文芸賞第16回(2009年度)島清恋愛文学賞

三十五歳の脚本家、奈津は、才能に恵まれながら、田舎で同居する夫の抑圧に苦しんでいた。ある日、夫の創作への関与に耐えられなくなった奈津は、長く敬愛していた演出家・志澤の意見に従い、家を飛び出す決意をする。束縛から解き放たれた女性が、初めてめぐり合う生と性、その彷徨の行方を正面から描く衝撃的な官能の物語。

『自転しながら公転する』山本文緒

第16回(2021年)中央公論文芸賞第27回(2020年度)島清恋愛文学賞のダブル受賞。

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