毎年夏ごろに行われる新潮文庫の百冊フェア。
1990年から2009年までの20年間連続で選ばれ続けている17作品をまとめました。
日本の作家と海外の作家の作品で分け、ページ数の少ない順に並べています。
日本の作家の作品
日本の作家は8作品ありました。
『蜘蛛の糸・杜子春』芥川龍之介
地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる「蜘蛛の糸」。
大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた「杜子春」。
魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な「アグニの神」。
少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。
ページ数:128
『人間失格』太宰治
「恥の多い生涯を送って来ました」。そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。ひとがひととして、ひとと生きる意味を問う、太宰治、捨て身の問題作。
ページ数:192
『砂の女』安部公房
砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。
ページ数:288
『こころ』夏目漱石
親友を裏切って恋人を得た。しかし、親友は自殺した。増殖する罪悪感、そして焦燥……。知識人の孤独な内面を抉る近代文学を代表する名作。
ページ数:384
『金閣寺』三島由紀夫
吃音と醜い外貌に悩む学僧・溝口にとって、金閣は世界を超脱した美そのものだった。ならばなぜ、彼は憧れを焼いたのか? 現実の金閣放火事件に材を取り、31歳の三島が自らの内面全てを託した不朽の名作。
ページ数:400
『黒い雨』井伏鱒二
一瞬の閃光に街は焼けくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。原爆の広島――罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、“黒い雨”にうたれただけで原爆病に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。被爆という世紀の体験を、日常の暮らしの中に文学として定着させた記念碑的名作。
ページ数:416
『新編 銀河鉄道の夜』宮沢賢治
貧しい少年ジョバンニが銀河鉄道で美しく哀しい夜空の旅をする表題作等、童話13編戯曲1編。絢爛で多彩な作品世界を味わえる一冊。
ページ数:432
『塩狩峠』三浦綾子
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
ページ数:464
海外の作家の作品
海外の作家の作品は9作品ありました。
『変身』フランツ・カフカ
ある朝、気がかりな夢から目をさますと、自分が一匹の巨大な虫に変わっているのを発見する男グレーゴル・ザムザ。なぜ、こんな異常な事態になってしまったのか……。謎は究明されぬまま、ふだんと変わらない、ありふれた日常がすぎていく。事実のみを冷静につたえる、まるでレポートのような文体が読者に与えた衝撃は、様ざまな解釈を呼び起こした。海外文学最高傑作のひとつ。
ページ数:121
『異邦人』アルベール・カミュ
太陽の眩しさを理由にアラビア人を殺し、死刑判決を受けたのちも幸福であると確信する主人公ムルソー。不条理をテーマにした、著者の代表作。
ページ数:143
『ジーキル博士とハイド氏』ロバート・ルイス・スティーヴンソン
ロンドンの高名な紳士、ジキル博士の家にある時からハイドという男が出入りし始めた。彼は肌の青白い小男で不愉快な笑みをたたえ、人にかつてない嫌悪、さらには恐怖を抱かせるうえ、ついに殺人事件まで起こしてしまう。しかし、実はジキルが薬物によって邪悪なハイドへと姿を変えていたのだった……。
人間の心に潜む善と悪の葛藤を描き、二重人格の代名詞としても名高い怪奇小説。
ページ数:153
『老人と海』アーネスト・ヘミングウェイ
自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。
ページ数:192
『かもめのジョナサン』リチャード・バック
「飛ぶ歓び」「生きる歓び」を追い求めたジョナサン。奇跡の最終章を新たに加え、伝説のかもめがあなたを変える。世界四千万部のベストセラー。
ページ数:198
『車輪の下』ヘルマン・ヘッセ
ひたむきな自然児であるだけに傷つきやすい少年ハンスは、周囲の人々の期待にこたえようとひたすら勉強にうちこみ、神学校の入学試験に通った。だが、そこでの生活は少年の心を踏みにじる規則ずくめなものだった。少年らしい反抗に駆りたてられた彼は、学校を去って見習い工として出なおそうとする……。子どもの心と生活とを自らの文学のふるさととするヘッセの代表的自伝小説。
ページ数:246
『十五少年漂流記』ジュール・ヴェルヌ
14歳のゴードンを頭に15人の少年たちだけを乗せたスクーナー船が、ふとしたことから荒海に出てしまった。大嵐にもまれたすえ、船は、とある岸辺に座礁。島か大陸の一部かもわからないこの土地で、彼らは生きるためにさまざまな工夫を重ね、持ち前の知恵と勇気と好奇心とを使って、スリルに満ちた生活を繰りひろげる……。“SFの祖”ジュール・ヴェルヌによる冒険小説の完訳決定版。
ページ数:285
『赤毛のアン』ルーシー・モード・モンゴメリ
ちょっとした手違いから、グリン・ゲイブルスの老兄妹に引き取られたやせっぽちの孤児アン。初めは戸惑っていた2人も、明るいアンを愛するようになり、夢のように美しいプリンス・エドワード島の自然の中で、アンは少女から乙女へと成長してゆく――。愛に飢えた、元気な人参あたまのアンが巻き起す愉快な事件の数々に、人生の厳しさと温かい人情が織りこまれた永遠の名作。
ページ数:529
『罪と罰』ドストエフスキー
独自の犯罪哲学によって、高利貸の老婆を殺し財産を奪った貧しい学生ラスコーリニコフ。良心の呵責に苦しむ彼の魂の遍歴を辿る歴史的傑作。
ページ数:585