恋の短歌

恋の短歌短歌

恋の短歌をあつめました。

「恋愛」って短歌の真骨頂のような気がします。

恋の短歌

馬鈴薯の花咲く頃となれりけり君もこの花好きたまふらむ/石川啄木

その頃は気もつかざりし仮名ちがひの多きことかな、昔の恋文!/石川啄木

たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてくれぬか/河野裕子

ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし/岡本真帆

イルカがとぶイルカがおちる何も言ってないのにきみが「ん?」と振り向く/初谷むい

疑ってる まだ疑ってる 本当の恋ならこんなに楽しくないはず/中村美智

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ)/栗木京子

たくさんのおんなのひとがいるなかでわたしをみつけてくれてありがとう/今橋愛

寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら/俵万智

「また電話しろよ」「待ってろ」いつもいつも命令形で愛を言う君/俵万智

落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し/俵万智

愛人でいいのと歌う歌手がいて言ってくれるじゃないのと思う/俵万智

「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの/俵万智

いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える/俵万智

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日/俵万智

眠りつつ髪をまさぐる指やさし夢の中でも私を抱くの/俵万智

年下の男に「おまえ」と呼ばれていてぬるきミルクのような幸せ/俵万智

逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月/俵万智

昨日逢い今日逢うときに君が言う「久しぶりだな」そう久しぶり/俵万智

別れ話を抱えて君に会いにゆくこんな日も吾は「晴れ女」なり/俵万智

きつくきつく我の鋳型をとるように君は最後の抱擁をする/俵万智

焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き/俵万智

ポン・ヌフに初夏(はつなつ)の風ありふれた恋人同士として歩きたい/俵万智

シャンプーを選ぶ横顔見ておればさしこむように「好き」と思えり/俵万智

二週間先の約束嬉しくてそれまで会えないことを忘れる/俵万智

何層もあなたの愛に包まれてアップルパイのリンゴになろう/俵万智

「今いちばん行きたいところを言ってごらん」行きたいところはあなたのところ/俵万智

まっさきに気がついている君からの手紙いちばん最後にあける/俵万智

適切なキスの長さが分からずにほへとちりぬるあたりで止めた/西村曜

非正規とバイトの恋は非正規がバイトのぶんを多く支払う/西村曜

友達じゃがまんできない 2回しか会ったことないけど 最寄りわかるよ/手塚美楽

猫背の男、好きかも レモンイエローのサンダルを手に越えるせせらぎ/佐藤涼子

「よく笑うひとなんですね」笑わせてくれるひとから言われてしまう/千原こはぎ

キシリトールガムばかり選ぶ正しさで私を選ばないのだ君は/小春まりか

大好きな人に幸あれ 今すぐに幸あれ 日常的に幸あれ/尼崎 武

どこへでも行きたいけれど君といて座っていればうれしき臀部/渡辺松男

五線譜にのりさうだなと聞いてゐる遠い電話に弾む君の声/小野茂樹

活字拾う仕事にもすでにわが慣れて「恋」という字の置場所も知る/浜田康敬

残業は日々続きいてポケットに少女の名前の活字秘めつつ/浜田康敬

動こうとしないおまえのずぶ濡れの髪ずぶ濡れの肩 いじっぱり!/永田和宏

やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君/与謝野晶子