岩波文庫フェア「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」というのがあります。
読書という人生の大きな楽しみの一つを存分に堪能していただきたいという思いの、いつか読もうと思っていた一冊、誰もが知っている名著、意外と知られていない名作――岩波文庫のエッセンスが詰まったフェアです。
そんな岩波文庫フェアで取り上げられた作品を2020年から2022年までの3年間分調べ、3年連続で取り上げられた作品2点と、2021年と2022年の2年連続で取り上げられた5作品を紹介しています。
3年連続(2020~2022年)取り上げられた作品
『銀の匙』中勘助
なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙.伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々.少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には,子ども自身の感情世界が,子どもが感じ体験したままに素直に描き出されている.漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作
灘校の国語教師・橋本武先生が伝説の超スローリーディング授業で使用したということでも有名ですね。
ボクも読みました。淡々と、正確に、丁寧に書かれた文章で、とても好きな作品です。
穏やかな川の流れのような心地がするような文章でした。
『伝奇集』J.L.ボルヘス/鼓直 訳
夢と現実のあわいに浮び上がる「迷宮」としての世界を描いて現代文学の最先端に位置するボルヘス(一八九九―一九八六).われわれ人間の生とは,他者の夢見ている幻に過ぎないのではないかと疑う「円環の廃墟」,宇宙の隠喩である図書館の物語「バベルの図書館」など,東西古今の神話や哲学を題材として精緻に織りなされた魅惑の短篇集
2年連続(2021~2022年)取り上げられた作品
上記に記載した、3年連続取り上げられた作品は省いています。
『自省録』マルクス・アウレーリウス/神谷美恵子 訳
生きているうちに善き人たれ―ローマの哲人皇帝マルクス・アウレーリウス(一二一‐一八〇)。重責の生のさなか、透徹した内省が紡ぎ出した言葉は、古来数知れぬ人々の心の糧となってきた。
『自由論』J. S. ミル/関口正司 訳
「本人の意向に反して権力を行使しても正当でありうるのは、他の人々への危害を防止するという目的での権力行使だけである」。大衆の画一的な世論やエリートの専制によって個人が圧殺される事態を憂慮したJ・S・ミル(一八〇六―一八七三)は、自由に対する干渉を限界づける原理を提示した。自由について考える際の最重要文献の明快な翻訳。
『職業としての政治』マックス・ヴェーバー/ 脇圭平 訳
「どんな事態に直面しても『それにもかかわらず! 』と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への『天職』を持つ」。マックス・ヴェーバー(1864-1920)がドイツ敗戦直後、自らが没する前年に行った講演の記録。政治という営みの本質、政治家がそなえるべき資質や倫理について情熱を傾けて語る。
『新訂 方丈記』鴨長明/市古貞次 校注
人の世の無常を感じ出家遁世した長明。しかし方丈の草庵で安住できない。この苦渋にみちた著者の内面が、和歌雑淆・対句仕立ての格調ある文章によって表現され、古来人々の愛読する古典となった。
『白い病』カレル・チャペック/阿部賢一 訳
戦争目前の世界で、突如「雪崩のように」流行り始めた未知の疫病。大理石のような白い斑点が体のどこかにできたが最後、人は生きながら腐敗してゆく。そこへ特効薬を発見したという貧しい町医者が現れたのだが――。死に至る病を前に、人びとは何を選ぶのか? 1937年刊行の名作SF戯曲